多軸制御システムを効率よく構築できることから産業用機器設計者の間で注目を集めているハイバーテックのモジュール式モーション・コントロール・システム「motionCAT」。実は同システムが役立つのは多軸制御を必要とするシステムだけとは限らない。高度な機能を備えた合理的な制御システムを素早く構築できることから,制御システムの機能や性能の向上に取り組む多くの産業用機器設計者に利点をもたらす。実際にこうしたmotionCATの特長を利用して制御システムの進化を図ったのが,半導体製造装置をはじめとする産業用機器を手掛ける全協化成工業(本社:東京都北区)だ。

三苫慎也氏
三苫慎也氏
全協化成工業
技術部 電気設計課 主任

1964年に創業した全協化成工業は,産業用装置の設計・開発および設置工事を手掛けている(図1)。主力事業 は1960年代後半から手掛けている半導体関連の装置で,ウエーハ洗浄装置を中心に,エッチング装置、石英管洗浄装置,ベルジャー洗浄装置,窒化膜エッチ ング装置,レジスト剥離装置,現像装置,キャリア洗浄装置など数多くの種類の半導体製造装置を手掛けてきた(図2)。このほか液晶ディスプレイ,光ファイバー,太陽電池の製造に関連する装置や,各種薬液供給システムなども提供している。「長年培ってきた技術やノウハウを生かして,お客様の要望に応じたカスタム装置を数多く開発しています」(同社技術部電気設計課主任の三苫慎也氏)。

最適なシステムが迅速に構築できるモジュール式

図1 全協化成工業(埼玉事業所)
図1 全協化成工業

同社は,2010年秋に第1号機を出荷する新しい枚葉式半導体ウエーハ洗浄装置に,ハイバーテックのmotionCATを同社として初めて採用した。「従来,提供してきた装置では,シーケンサを使って制御システムを構築していましたが,最新機ではmotionCATを利用してパソコンを中心にした制御システムに一新しました」(三苫氏)。

モジュール式のmotionCATは,パソコンを核にした制御システムが効率よく構築できるシステムだ(図3)。 パソコンのスロットに挿入するマスターボードと,そのボードを介してパソコンから制御できる複数のスレーブから成る。マスターボードとスレーブの間は,高 速シリアル通信システム「Motionnet」で接続する。市販のLANケーブル(カテゴリ5eまたはカテゴリ6)を使って1枚のマスターボードに複数の スレーブを数珠つなぎにする,いわゆるマルチドロップ接続が可能だ。1枚のマスターボードには2系統の信号線が接続できるようになっており,それぞれ 1〜8基のスレーブを接続できる。1スレーブは複数枚のモジュールで構成され,1モジュールから最大6モジュールを連結できるようになっている。モータ制 御の場合1スレーブに6軸分,DIOの場合は192点を収容できる。モジュールには,通信機能を担う「通信ボード」,モーター・ドライバを制御する「モー ション・モジュール(1軸)」,デジタル入出力用の「DIOモジュール」,A-D変換回路とD-A変換回路を内蔵したアナログ入出力モジュールなどが用意 されている。

図2 全協化成工業の主力製品の一つ「カセットレス洗浄装置」
図2 全協化成工業の主力製品の一つ「カセットレス洗浄装置」 (クリックで拡大します)

このシステムは,多軸の制御システムを効率よく構成できる。スレーブを分散して配置でき,効率よくスペースを利用出来る。さらに,軸数の追加などの使用変 更に柔軟かつ迅速に対応できることから,産業用装置の設計者を中心に注目を集めている。ただし,全協化成工業がmotionCATに 注目したのは,必ずしもこうした特徴だけではない。「私たちが提供している装置の場合はそれほど多軸の制御は必要ありません。私たちにとって重要なポイン トは,半導体の技術の進化に合わせて洗浄プロセスを進化させるために,従来のシーケンサよりも高度な制御が実現できることでした。このために motionCATが有利だと考えました」(三苫氏)。

回転テーブルの加速度を複雑に制御

同社が,motionCATを導入のキッカケになったのは,洗浄するウエーハを乗せる回転テーブルの制御を,より複雑にすることを考えたことだった(図4)。 同社が手掛けている枚葉式洗浄装置は,回転テーブルの上にウエーハを固定し,ウエーハを高速で回転させる機構を備えている。回転するウエーハの中心付近に 上から薬液を供給すると,遠心力によってウエーハの内側から外側にウエーハの表面を薬液が流れる。これによってウエーハの表面を洗浄する。このときウエー ハを回す速度を変えることによって,薬液の流量などを制御できる。「最新機で狙ったのは静止した回転テーブルの回転数を引き上げるときの加速度を変化させ ることです。ところが従来のシーケンサを使ったシステムでは,加速度を制御することができませんでした。そこで従来から知り合いだった商社の方に紹介して いただいたmotionCATを試作機に組み込んで検討することにしました」(三苫氏)。

図3 制御システムを効率よく構築できる「<strong>motionCAT</strong>」
図3 制御システムを効率よく構築できる「motionCAT (クリックで拡大します)

この検討の結果,同社は枚葉式ウエーハ洗浄装置に最新機にmotionCATの採用を決めた。量産装置では,マスターボー ドに二つのスレーブを備えたシステムを導入している。一つはモーション・モジュールを中心にしたスレーブで主に3軸のサーボ・モータ・ドライバを制御。も う一つはデジタル入出力モジュールを中心にしたスレーブで,ローダーなどの周辺の機構系の制御などを受け持っている。「シーケンサを使った従来の制御シス テムに比べてプログラミングの際の制約が少ないので開発をスムーズに進めることができました。合理的なシステムなのでコストの点でも有利だと思いま す」(三苫氏)。

サンプルを活用してプログラムを作成

同社にとって,パソコンを使った制御システムを開発するのは,これが初めてだった。それにもかかわらず比較的短期間で開発を進めることができた。「最初にmotionCATの 紹介を受けたのが2009年5月ころでした。それから約1年で量産機向けの開発をほぼ終えることができました」(三苫氏)。実は,効率よく開発をすすめる うえでハイバーテックのサポートが少なからず貢献しているという。その一つが,ハイバーテックが実施している開発者向けのセミナーである。同社製品を初め て導入したユーザーや,導入を検討しているユーザーを対象にしたセミナーで,制御に基本から製品の使いこなしまでを同社の技術者が説明する。 「motionCATを知った約1ヶ月後に3名の設計者がセミナーに参加しました。このときに制御システムの設計に必要な基本知識を学ぶことができました」(三苫氏)

図4 <strong>motionCAT</strong>で実現できる制御
図4 motionCATで実現できる制御

もう一つ役立ったのが,ハイバーテックがmotionCATとともに提供しているサンプル・プログラムである。「サンプル といっても実用レベルのプログラムなので,製品に組み込んだプログラムの基本部分はサンプル・プログラムを利用して作成することができました」(三苫 氏)。このほかに今回は,装置と合わせて提供するパソコンのOSが「Windows7」だったことから,Windows7に対応した各種ドライバ・ソフト ウエアをハイバーテックが新たに提供している。

全協化成工業は,motionCATを他の製品にも展開することを前向きに検討しているところだ。「他の装置の開発を担当する設計者ともmotionCATに関する知識を共有しながら,さらなる展開の可能性を探る方針です」(三苫氏)。

※ 会社名,製品名は,各社の商標もしくは登録商標です。

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